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富士山五合目の日々 3


      

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シシウド 8/11(水)
かなり疲れているらしく片方のストックを折りふらふらしながら下り
てきた米国人、地図で吉田口を指して「ここか?」と聞く。
富士山の反対側の表富士宮口五合目を指して「ここだ」と答える。
Oh,no !
下山口を間違えないように案内板が富士宮口は青、御殿場口は
緑、須走口は赤、吉田口はオレンジと色分けされているのだが。
幾人もの外国人が吉田口と間違えて表富士宮口へ下りる。
先日はドイツ人、サンダル履きの台湾の青年もいた。

吉田口のバスのチケットは富士山五合目としか表示してないし
富士山五合目は一つだけと思っている人も多いようだ。
富士山には登山口が4つあると言うとびっくりする。

疲れて眠いと言いながらも「私は60歳だけど五合目から頂上まで
3時間45分で登った」と自慢、「お前は何時間で登るのか」と
聞いてくるところはアメリカ人。

通訳に電話して本人の意思を確認しながら河口湖近くのホテル
に連絡、仲間が送って行くことに。
キツリフネ
六合目から15分くらい登った所で動けない人がいる。救助隊
では到着までに3〜4時間かかってしまう。明かりがあれば
何とか下りられそうだというのでライトを持って行って貰えないか
と警察より連絡。

時間が遅かったので六合目の小屋へ寄って入り口の鍵を
閉めずに待っていてくれるよう依頼、それから上に向かった。

登る人がほとんどの中、5分ほど登ると下ってくるライトの列が
見えた。両側から抱えられて下りてくる外国人女性、名前を
確かめて一緒に下った。着衣が濡れてしまっているので水ヶ塚
公園の車まで下りたいと言ったが六合目の小屋に泊めさせた。

その女性を下ろすのを手伝って最終バスに乗り遅れてしまった
家族連れ、タクシーで帰って富士宮市内に宿泊する羽目に
「でも、怪我人を放って帰れないでしょ」と言ってくれた。
登っている途中で下ろすのを手伝いまた六合目まで戻って
しまった青年2人、上半身裸になって汗を拭き再び登って行った。
こうした善意の人に報いる事が出来ない。
トモエシオガマ
8/12は台風4号の影響を諸に受けて強い風雨、登山者に
危険なので登らないよう、早めに小屋に入るよう注意を
促すのだが強行する人達も少なくない。

午後になってから山頂で倒れている人がいるとの通報で
救助隊が出動する事態が発生、意識がないとか朦朧としている
との情報だったが夜になって亡くなったとの知らせ。

着衣がびしょ濡れだったとの事で低体温症が原因らしい。

五合目でも風雨の中を合羽を着て外に出ているとあらゆる
ところから雨が浸入し衣服を濡らす。まして山頂の風雨は
五合目の比ではない。
頂上に泊まって下って来た人に様子を聞くと「息が出来ない位
の風だった」「飛ばされそうになった」等々、10時頃までは
下ることも出来なかったそうだ。

数百回登っているというベテランの人達はこんな天気の時に
富士山へは絶対に近付かない。
イワアカバナ
富士宮ルートを八合目まで登って御殿場ルートの赤岩八号館に
宿泊したいという登山者がいた。そこをトラバースするルートは
「通行止」と聞いているので「行けない」と言った。登山者が
そのことを赤岩八号館に電話すると「無視して通って来い」と
言ったそうだ。

関係機関に電話しても要領を得ない。富士宮ルートを管理する
県の土木事務所は「登山道として整備してないので危険だから
通らないように」との見解。しかし、御殿場ルートは登山客が
少なく、富士宮口からの登山者を泊められるか否かは御殿場
ルートの山小屋にとっては死活問題 ?
なので、県としても通行禁止とは言えず、あやふやな対応に
なっているのではないだろうか。

その事で一番迷惑を被るのは登山客、山小屋の論理でなく
登山客の安全と便宜を優先して考えるべき。

静岡県側は山梨県側に比べ登山客が1/3、原因は東京からの
便が良いからという理由だけではないような気がする。
8/16(月)
8/15の17:00で2回目のマイカー規制が終わった。16日の今日、
駐車場は無法地帯、大型バスの通行にも支障が出るほどでたら
めな路上駐車。あちこちから苦情が出たのだろう、警察から
五合目に上る車を交通整理してくれないかとの電話、我々の
仕事ではないので是非警察でやって欲しいと逆に依頼。

交通整理の警官2人が乗ったパトカーが到着した15時過ぎまで
道路の両側に駐車した車でバス1台が通るのがやっとという
状態が続いた。危険度の高い所に停めた11台の車に違反の
ステッカーを貼ったそうだ。

私が帰る17:00にはかなり混雑は緩和されていた。パトカーの
警官に「明日は朝からお願いします」と伝えた。
「出来るだけご要望に沿うようにします」と言ってくれたが
どうなることやら。

マイカー規制中が平和だったので規制が解除された後の無法
ぶりが矢鱈と目に付く。
トリカブト
8/17付け朝日新聞に軽装で富士登山する人の写真が出ていた。
我々が注意して登るのを止めてもらうようにしなければならない
のだがアンケート等、雑用が多すぎる。

ルートマップを配布しろとか、そのルートマップが役に立ったか
否かのアンケートをとれとか・・・。

今度は環境省と県から富士山の登山道に関するアンケートの
依頼、「本来の業務に差し支えない範囲で」と来た。
しかし、1枚のアンケートに答えて貰うのに5〜10分かかる。
本業に差し支えない訳がない。
アンケートの内容はというと、案内板は見やすいか? とか
文字の大きさはどうか? とか。疲れ果てて下りて来た登山者に
わざわざ聞くほどの事ではない。露骨に嫌な顔をする登山者も
多い。
自分達で考えれば済むことをアンケートで意見を集約して何の
意味があるのか、無駄だと思いながらやる仕事ほど疲れるし
やる気を奪う。もし、自分がそんなアンケートに答えてくれと
頼まれたら怒るよ、と仲間と話す。
山ガール
TVや雑誌等で山に登る女性が増えているとの報道。
富士山人気という事でどこのスポーツ店でも富士山コーナー
が設けられている。そのコーナーに行けばウェアや道具が
全て揃えられるようになっているのだが若向き商品も多い。

今まで山というと中高年がメインだった。なのでウエアはくすんだ
色がメイン。でも、富士山五合目では若い女性も目立つ。
ファッションはカラフルで機能性タイツに巻きスカートかショート
パンツ、お化粧ばっちりの女性を山ガールと呼ぶのだそうだ。

その若向きのファッションを無理して纏っている中年女性を
山姥と呼ぶスジもあるとかないとか。

山ガールに付き添う若い男は山ボーイとは呼ばずに山男
なのだそうだ。

そんなこんなで ? ここ数年、富士山の登山者は大幅に増えて
盆を過ぎても大勢の登山客で賑わている。
雨上がりの夜明け
三十年近く前、那須岳に登ったことがある。その時、山小屋の
小屋番をしていたお兄さんと話した。「富士山の麓から来た」と
言うと「そんな良い所に住んでいて何でこんな所に来るの?」と
言われた。

それまでは目の前にあるのが当たり前だった富士山をちょっと
意識して見るようになった。

日本一高い富士山は日本中の多くの人々が登る。
今では世界中から多くの人たちが登りに来る。

アンドラは初めて聞いた国名、フランスとスペインの国境に
小さな国があること自体知らなかった。数は多くないが
旧ソ連の小さな国々からも富士山に登りに来る人がいる事は驚き。

8月も中旬を過ぎたら外国人の登山客は急減した。若いときに
この富士山五合目を経験したら英語の勉強ももっと一生懸命
やったかも知れない。
                                            
待宵草
8/22に富士山の一斉清掃が行われた。1,100人の人々が
ボランティアでゴミを拾って歩いた。

我々もマイカー規制になると駐車場を一周してゴミ拾って歩く
のだが毎回ゴミ袋が重くなるほどのゴミが集まる。
ペットボトルやジュースの空き缶、食べ物の包装などが多く、
中には破れた雨具やソールの剥がれかかった靴等も捨ててある。
一番困るのが人糞や吐瀉物、本当に旅の恥はかき捨て。

普段の日でも「拾って来ました」とゴミを届けてくれる人、
登山道にゴミが多いと教えてくれる人も多い。
なのでゴミを捨てるのは一部の人達なのだろうが、わずかな人達
のせいで富士山は汚いとの評価になってしまう。

今日は何トンのゴミが集まるのだろうか? 
それでも富士山周辺のゴミまでは拾いきれない。
8/24(火) 満月
ここ2・3日は夜になってからの気温が少し下がって来たせいか、
富士山の五合目は雨が降っていない。「途中、大降りだったよ」と
五合目に上って来た人が口を揃える。
今夜も雲上は天気が良く満月。

星を撮りに来たというオジさんがいた。「今夜は月にして下さいよ」    
と言うと「月は昨日撮ったからもういい、今日は星だ」と言う。
月夜に星を撮ろうとしても・・・。

もう一組、星座盤を空に翳して空を見上げている親子連れがいた。
「前に来た時はもっと星がたくさん見えたんだけど」とお母さん。
「あと15日経てば、月が小さくなれば天の川もくっきり見えますよ」
「それじゃあ間に合わないんですよ」

一生懸命になって子供の夏休みの宿題をやっている両親の姿は、
自分が幼かった頃の両親と重なる。
その割りに子供は能天気だったなぁ。
ミヤマダイモンジソウ
富士山五合目へ軽のワンボックス4WDで通勤している。
上りの傾斜がきつく、軽自動車は止まってしまうのではないかと
思う程スピードが出ない。イライラしても仕方ないのでお花を
探しながら走る。時々後ろを振り返らないと車の列が出来てしまう。

登山区間の四合目付近の石垣で見つけたミヤマダイモンジソウ、
他車の通行の邪魔にならない場所に軽自動車を停めて写真を
撮った。

2ヶ月近くも五合目に通っていると咲いている花が次第に変わって
来る。ヤマハハコや名前を知らない花も・・・。

スピードが出ない軽自動車だからこそ撮れる写真、
と強がっている。

9/6に富士山に登ろうという話がある。参加すると意思表示した
途端に膝痛、ちょっとヤバイ。
フジアザミ
登山で女性が野原で用を足す事をお花摘みというそうな。そんな
下の話ではなく文字通りお花摘み。

五合目の駐車場で何やら花を摘んでいる女性、近くに行って
見るとトリカブトを摘んでいた。
「旦那さんに怨みでもあるんですか?」と聞くと怪訝そうな顔。
「どうせなら根っこの方が毒が強くて良いですよ」
と言うと花を放り投げた。「毒なんですか?」
「トリカブトで旦那を殺したというニュース見たことありません?」

「ここは国立公園なので高山植物を折らないでくださいね」と言う。


表富士宮口五合目ではフジアザミを見た事がなかった。
でも、登山道の途中で一株だけ見つけてパチリ。
御殿場口ではフジアザミばかりだが、どういう訳か表口には
ほとんどない。
8/27(木)
暫く前まで勤務が終わったら眠くても我慢して家まで帰っていた。
でも、富士山で車中泊した方が涼しくて良く眠れる。

ワンボックスのリヤーシートを倒し床をフラットにしてある。
家では暑苦しくてかけ布団は要らないのだが、ここ高鉢駐車場
では寝袋にしっかりもぐる。
一昨日は寒くて目が覚めたので今日は少し厚着した。

食事もカップラーメンとか鍋焼きうどんとか暖かいものをと
ガスコンロも用意。

しっかり寝てから帰ると運転が楽、何より昼間寝ないで済む
という事が富士山五合目のバイトが終わる頃になって
ようやく分かった。
もっと早く気が付けばバイト生活ももう少し快適に過ごせたかな?


ヤハズヒゴダイ
暗くなって下りて来る人にライトを持ってない人が多い。
明るいうちに下りられるだろうと思っていたが予想外に時間が
かかってしまったと言う。そんな人に事故がある。
下るときには疲れて注意力が散漫になり、その上に暗い山道
を無灯火では転倒や捻挫に繋がり易い。

9.5合目で足を痛めて踵が着けないと臨時派出所に相談の電話
があったそうだ。仲間が9人いるとの事だったので何とか
出来る所まで自分達で下ろすという事に。
22時頃に無事に下山しましたとの連絡が入って一件落着。

20時過ぎ、転んで肩を強打したという中年の男性が詰め所に来た。
ひじのすり傷を消毒し救急病院の場所を教えた。

こちらに届出はないが足を引きずって、あるいは両肩を支えら
れて下りて来る人は数知れず。

日帰りでもライトは必需品なのだが、登山口でルートマップを配布
して喜ばれているようでは何とも心許ない。
イワオウギ タイツリオウギ
イワオウギとタイツリオウギ、花が散って種が出来ると鞘の形で違いが分かるとの事、確かに違う。
他にもイワオウギは花が付く茎が赤くなるのだそうだ。
靴底
昔の登山靴はアッパーと靴底を接着してから縫い付けてあった。
今の登山靴は接着剤で貼り付けてあるだけ。なので5年も経つと
接着力が落ちて靴底が剥がれてしまう。 私の靴もサイドラバーが
剥がれかかってきたので今年靴底を貼り替えた。

今日下って来た人、靴底が剥がれ落ちてしまったので自分が
身に着けていた軍手や靴下、Tシャツを靴に巻いて小屋の脇で
拾った縄で縛って来たという。あまりに目立つ格好だったので
写真を撮らせて頂いた。

先日も登る前から靴底が剥がれかかっている人がいた。
完全に取れてしまうと怖いので登らないように言ったのだが、
五合目から引き返す人は先ずいない。
レストセンターで貰ったという紐で縛ってきた。予備の紐も貰って
来るように言ったのだがどうしたことやら。

駐車場には靴底が剥がれた靴、剥がれそうになった靴が毎日
のように何足も置き去りにされている。

9/3(金)
表富士宮口の富士山の山小屋が3日現在で八合目以上は
開いていない。元七、新七も6日までには閉めるとの事。
そこで問題になるのが用足し、6日以降、新六合の山小屋より
上ではトイレが使えない。
今日既に、山小屋の付近で至る所に人糞があり、それを踏んで
しまったとの苦情が出ている。
今日までの様子だと9月一杯は登山客がありそう、県の観光課の
窓口にも韓国辺りから団体での9月以降の富士登山の問い合わせ
が来ているそうだ。六合目以上の登山道を通行止めにすれば
事足れりとしている県の姿勢にも問題ありと思う。
山小屋を交替で開けてもらうとか携帯トイレ用ブースを設けて
携帯トイレを持参してもらうとか、対策が必要ではないかと思われ
るが現状は容易ではない。
山梨県側の反対で流れたという世界文化遺産への登録申請は
静岡県側もトイレの問題すら解決出来ていない。
何はともあれ私の富士山でのバイトは今日で終了、6日は人糞を
踏まないように富士山の頂に立って来たい。


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